脳動脈瘤

未破裂脳動脈瘤の診断は命を救う

脳動脈瘤は蜘蛛膜下出血の最大の原因です。蜘蛛膜下出血で手術ができた70歳以上の患者様では5年以内の死亡が42%、19%は何らかの介助を必要とし、自立できるのは38%に過ぎません。手術もできずに死亡される患者様も数多くおられます。このように脳動脈瘤は破裂前に診断し治療を行うことが大切なのです。
脳動脈瘤の自然破裂の危険性は動脈瘤が0.5cmを越えると高くなると言われていますが、その正確な患者数はあまり報告がありません。当院で2002年4月から2014年3月までの間に発見された0.5cm以上の未破裂脳動脈瘤患者様は10人です。約10000件の脳MRI検査を行っていますので、概略1000件に一人の割合(0.1%)です。文献によると大小の脳動脈瘤は100人に4人(4%、全部で500万人)もの頻度があるとも言われています。
動脈瘤の発生は高血圧や糖尿病などにより高まり、動脈瘤の大きさも増大してきますので、40歳を過ぎたら毎年、頭部MRI検査を行う事が未破裂脳動脈瘤の早期診断につながると思われます。早期診断により年間3万人も発症する蜘蛛膜下出血を防止することができるのです。

提示した症例は無症状で当院を受診されMRA検査やCTAを受けた患者様のものです。
状図 47才女性 左中大脳動脈瘤。下図:左前大脳動脈瘤 79才女性。
いずれも手術が成功し現在ご健在です。

蜘蛛膜下出血の際には激しい頭痛や意識消失、嘔吐などが起こります。このような状態になれば、一刻も早くCT検査を行い蜘蛛膜下出血であることを確定診断して、脳外科病院へ救急搬送します。当院は救急検査にも対応していますので、お知り合いやご家族がこのような状態になっていたら、迷うことなく、お電話を頂きたいと思います。

未破裂動脈瘤2症例

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蜘蛛膜下出血:緊急CT

4 未破裂脳動脈瘤は人口の4%、500万人の方が罹患しています(推定値) 蜘蛛膜下出血は年間3万人 小さな動脈瘤は年々大きくなります 年1回の定期的MRI/MRA検査がお勧め 激しい頭痛は自然破裂:蜘蛛膜下出血のサイン 緊急CT検査が必要

脳梗塞:急性期診断

急性期の診断で後遺症なし

脳梗塞は患者数150万人、年間発症数50万人です。寝たきり患者の30%がこの疾患が原因です。多発性梗塞では認知症へと進展する可能性が高くなります。初発症状はろれつが回りにくいとか、箸が持ちにくい、足が重たく感じるなど、軽微なものが多いが、これを脳梗塞による症状であると気付く事が何よりも大切です。

特に不整脈や心房細動の患者様では常に脳梗塞の可能性を疑っておく必要があります。
その際、超急性期の脳梗塞ではCT検査では何も異常所見がありませんので、すぐにMRI検査を追加する必要性があります。これは大切なポイントです。

急性期の脳梗塞ではTPA療法が行われ、後遺症のない資料が行われます。本当に一刻を争うような迅速な検査が必要です。

大脳の中心部にある大脳基底核周辺の動脈は元来細いので動脈(穿通枝)の硝子変性が起こって梗塞にいたります。梗塞が多発する傾向があり、認知症や脳血管性パーキンソン症候群の原因となることもあります。これらはラクナ梗塞と呼ばれます。治療法は確率されていませんが抗血小板療法が行われています。

頸動脈アテローム血栓性梗塞では一過性に視力が低下したり、カーテンが目の前に降りてくるように暗くなるというような症状が繰り返し起こります。このような一過性脳虚血の状態が先行します。抗血小板療法が適応されます。 心房細動でできた心房内血栓が引き起こした脳梗塞ではワーファリン治療が行われます。この場合、抗血小板療法や抗トロンビン療法は禁忌です。

ストレス社会を反映して、近年では若年者の脳梗塞が増えています。過労や不摂生な生活を改める必要があります。また、熱中症や脱水症の増える夏場にも脳梗塞は増える傾向にあるので、こまめに水分補給を行う事も大切です。大量に飲酒した場合も脱水症になりやすいので、寝る前と起床時の水分補給を行って下さい。

急性期:橋の梗塞  CTでは正常画像所見 MRIで橋に異常信号

急性期:橋の梗塞  CTでは正常画像所見
MRIで橋に異常信号

亜急性期の小脳梗塞  T2強調像(MRI)

亜急性期の小脳梗塞  T2強調像(MRI)

高血圧性脳出血

高血圧を放置すると…脳内血腫の危険性が

7 症例
69歳男性 高血圧を放置 ふらつき 血圧:183/106 mmHg
頭部MRI検査で高血圧性脳内血腫と診断 降圧剤服用で自覚症状が改善し 麻痺などの合併症はなく元気に通院中。

高血圧は決して放置してはいけない病気であることが、よくわかります。
高血圧の患者様は念のために定期的な MRI検査が必要であることがわかります。

慢性硬膜下血腫

なんだかふらつく…慢性硬膜下血腫

86才 男性 フラフラしていた ある日トイレで倒れていた 介護施設入所中
2012.6.7  発症  CT画像
2013.9.13 保存的治療で軽快 CT画像

慢性硬膜下血腫はほんの僅かな頭部外傷でも発生しますので、多くの患者様は外傷の記憶がありません。血腫が大きくなって脳を圧迫して初めて気が付くことが多い病気です。妙にふらつくとか、意識がもうろうとするとかに気付いたら、
すぐに頭CTまたはMRI検査を行って下さい。

慢性硬膜下血腫は発見が遅れると命取りになりますが治療を行えば予後は良好です。

治療前

治療後

治療後

認知症の診断

認知症・・・脳腫瘍が原因のことも・・・・

-MRI;VSRAD分析が認知症診断に有効-

認知症状を訴えた場合にはアルツハイマー認知症が疑われますが、他の病気が原因となる事もありますので、治療開始前には必ずMRI検査などの画像診断をお受け下さい。脳腫瘍や水頭症が認知障害の原因であることもあります。また、甲状腺機能低下症が原因のこともありますので甲状腺機能検査を行うこともあります。また、うつ病が原因のこともあり、認知症診断に当たっては、十分な注意が必要です。アルツハイマー認知症は側頭葉や海馬の神経細胞が変性し、当該部分が萎縮します。MRI画像を使ってVSRAD分析をすると、脳医縮の程度が分かります。

1

57才 男性 物忘れ
前頭部頭蓋底に発生した巨大髄膜腫
による脳実質圧迫による認知能低下

2

72才 女性 物忘れ
ラクナ梗塞 血管性認知症

認知症診断に有効なMRI画像のVSRAD解析 脳の萎縮を解析します